ゴールキーパー論~カシージャスは守護神に相応しいのか?~
エル・クラシコ今週の土曜日、日本時間の25時についにキックオフしますね。
さて、そんな時期にサッカーというスポーツの中で唯一手を使うことが許されているポジションであるGKについて考えてみたいと思います。
で、今回取り上げたいのはレアルマドリーやバルセロナ、チェルシーといったようなスタメンクラスのGKを揃えているクラブから考えてみたいと思います。
【そもそもGKの仕事って?】
近年、バルセロナやバイエルン・ミュンヘンなどのポゼッションをチーム戦術の主体として採用しているチームはボール保持の起点(基点)としてGKを利用しているクラブがある。
物事には当たり前にそれに起因する要素が存在する。例えになるが、GKに対してもプレッシングを掛けるハイライン・プレッシングを敷くチームがあったとしよう。そのチームのプレッシングを避けるためにキーパーはロングボールを味方を狙って蹴り飛ばすことは容易なことであろう。しかしながら、味方の選手に向けて蹴ったとしてもそのボールに対して相手DFが競り、ルーズボールになってしまったらそのボールの回収率は50:50になってしまう(もちろんGプレッシングやアトレティコのような戦術は除く)
確率的な話になるが、味方の前線に確実にボールを届けたいのであればGKがボールを蹴り飛ばすよりもGKからDFへとビルドアップを行った方がより高い確率で届けられる。もちろん、これを行うためにはDF陣の高いボールスキルや中盤の選手のフォローという側面は必要不可欠であるのも事実である。
これをより機械的に、オートマチックに行っているのがバルセロナやバイエルンというチームであるというのが冒頭のお話である。
昨季までバルサの守護神としてゴールマウスを守っていたV・バルデスやW杯王者に輝いたドイツ代表のマヌエル・ノイアーといった選手が挙げられる。
しかしながら、GKというポジションの存在意義ということを考えた場合、最優先事項はシュートをセービングするという事柄であるのは自明の理である。
今日はそのような観点から見ていきたいと思う。
【レアルマドリーのゴールを守るべきはカシージャス?ナバス?】
今回の記事を書くにあたって参考にしたいデータがある。
Balanced Sports: European Goalkeeper Stats 2012-13というところよりの引用なのだが、少し情報が古く2012‐2013のデータで2013‐2014のシーズンではないという点を留意して読んで頂きたい。
このシーズンはジョゼ・モウリーニョ監督がレアルマドリーを指揮した最後のシーズンとなったのだが、キャプテンであるイケル・カシージャスらとの確執が起きた年でシーズン中に4人のGKが起用されたという珍しいシーズンであった。フェルナンデスは1試合のみだったので、フェルナンデスの数値は引用しなかった。
レアルマドリー指揮官時代のモウリーニョと選手との確執についてはコチラを。
書評〜モウリーニョ×レアルマドリー「三年戦争」〜 | らもすいずむ | スポーツナビ+
続・書評~モウリーニョ×レアルマドリー「3年戦争」~ - らもすいずむのフットボールログ。
Team | Player | Games | Conceded | Saves | GAA | Save % | Saves/game |
Real Madrid | Casillas | 19 | 17 | 31 | 0.89 | 0.646 | 1.63 |
Real Madrid | Lopez | 16 | 20 | 55 | 1.25 | 0.733 | 3.44 |
Real Madrid | Adan | 3 | 3 | 5 | 1.00 | 0.625 | 1.67 |
ここで注目して欲しいのは、ディエゴ・ロペスのセーブ率である。カシージャスが0.646に対してロペスが0.733という高い数値を出しているのである。これはモウリーニョが前述したようにビルドアップに貢献できるだけではなく単純にGKの能力としてロペスを起用していたことが分かる。
参考数値として、バルサの当時の守護神であるバルデス、現在の守護神のクラウディオ・ブラボを引用してみる。
Barcelona | Valdes | 31 | 33 | 61 | 1.06 | 0.649 | 1.97 |
Real Sociedad | Bravo | 31 | 40 | 104 | 1.29 | 0.722 | 3.35 |
バルセロナという特殊なチームとの単純な数値の比較はできない。しかしながら、バルサがシュートまで持ち込まれるというシーンはカウンターなどにおいて相手チームに決定的機会を作られるという状況なのであるから仕方が無い節がある。
もう少し数値を挙げてみよう。今度はレアルマドリーに移籍したケイラー・ナバスとチェルシーに復帰してしまったティボ・クルトワである。
Levante | Navas | 9 | 10 | 39 | 1.11 | 0.796 | 4.33 |
Atletico Madrid | Courtois | 37 | 29 | 86 | 0.78 | 0.748 | 2.32 |
バルサのバルデスだけは特殊なチームであるだけに一概には判断できないが、少なからず他に例を出したGKの中で対比すると明らかにロペスがゴールマウスを守るに相応しい能力を発揮していたのは間違いない。
現在、カシージャスがスタメンの座に返り咲き、ナバスはベンチを温めているだけである。昨シーズンもCLと国王杯はカシージャス、リーガはロペスと定めシーズン終了までその決定を貫き通したアンチェロッティだけにシーズン途中での怪我など以外の理由で変更されることはないだろう。
しかしながら、昨季のCL決勝やW杯でのプレー、直近のスペイン代表でのパフォーマンスを鑑みてもレアルマドリーというビッグクラブでゴールマウスを守るには適していないとしか思えないのが現状である。
もちろん、カシージャスに救われた試合もある。カシージャスのミスによって、タイトルを逃しかねない試合もあった。しかし、チームの結束力という団体スポーツに最も必要な要素によって昨季のラ・デシマは達成された。カシージャスを外したモウリーニョを擁護する気は毛頭ない。だが、プロクラブとして勝利を義務付けられたクラブとして時には冷酷な英断もしなければならない時があるのではないかと感じた。
これはナンバーに限った話じゃなくて、WSDのヘスス・スアレスとかのコラムなどにも共通して言えることなんだけど、モウリーニョ&ペップが指揮したクラシコを振り返ると基本的にペップは善、モウリーニョは悪、として語られてるんだよね。
— らもすいずむ (@ramos_ism) 2014, 10月 21
別にその意見は間違ってると否定する気は毛頭ないし、モウリーニョ自身は"勝利"という果実を得る為に全力で闘ったに過ぎないし、今で言えばそれに似たモノはアトレティコのシメオネなんかも持ってるから、自分は一概にそれを悪とは捉えない。
— らもすいずむ (@ramos_ism) 2014, 10月 21
モウリーニョを悪として捉えるのも勝手だけど、アルベロアなんかみたいにモウリーニョへのリスペクトを持ち続けてる選手がいる事も事実だからね。
一方的な価値観で語るのは好きじゃないし、ペップの良いところだってあるわけだから、結局のところ十人十色だと思う。
— らもすいずむ (@ramos_ism) 2014, 10月 21
書評~知られざる。ペップ・グアルディオラ「サッカーを進化させた若き名将の肖像」 | らもすいずむ | スポーツナビ+