らもすいずむのフットボールログ。

多角的な観点でフットボールを読み解きます。時には戦術論、トレーニング論、マーケット論。常に本気でフットボールを思考する。

サッカーにおけるアウェイゴールという重圧

最近こんな記事を見掛けた。

 


サッカー=FIFA会長「アウェーゴールルールは時代遅れ」 (ロイター) - Yahoo!ニュース

 

【そもそもアウェイゴールとは?】

 CLやELなど各国カップ戦などのトーナメント戦で用いられるアウェイゴールとは何だろうか?分かりやすいWikipediaからの引用である(下線部強調は自分)

 

 クラブチーム間で争われる国際公式戦(UEFAチャンピオンズリーグAFCチャンピオンズリーグなど)や、FIFAワールドカップ予選のプレーオフなどでは、対戦するそれぞれのチームのスタジアムで試合を行うホーム・アンド・アウェー方式が採用されており、2試合の通算スコアによって成績を決定している。しかし、2試合の得点が同じ場合、単なる通算スコアの比較では両チームの勝敗が決まらず、勝ち上がるチームを決定できない。そこで、このような場合、アウェーでの獲得得点の多いチームを勝ちとする方式で勝敗を決定する。

 2試合目の後半終了時に総得点、アウェーゴール数ともに同点の場合は、そのスタジアムで延長戦を行うが、延長戦での得点が同点となった場合もアウェーゴールのルールが適用されることがある。すなわちその場合、延長戦での得点が1 - 1以上の同点ならば、延長戦を行ったスタジアムにおけるアウェーチームの勝利となる。採用しない場合はアウェーチームにとっては延長戦がアウェーの地でのみ行われることになり、2試合目をアウェーで戦うチームがやや不利といえる一方、採用した場合は前述の様に、延長戦ホームチームアウェーゴールを奪うことができないため、アウェーチームがやや有利となる。なお、日本においては、延長戦では採用されていない。

 同じ1点差の勝ち(負け)でも、無失点(無得点)で終わるのと1点でも取られる(取る)のとでは大きな差が生じ、また、スコア展開によっては差をつけて勝っていても1失点も許されないなど、緊張感のある方式である。

 

 CL以外での大会でも採用されているルールだが、プロスポーツの規模からしてみればCLが必然的に注目を浴びることになる。今回のブラッター会長の発言の理由はどのような経緯なのかは分からないが、以前にもアーセナルアーセン・ヴェンゲル監督が声高に主張していたことを覚えている。

 

 

【ヴェンゲルの主張の正当性】


ヴェンゲル:「UEFAにアウェーゴール撤廃を訴えた」 - Goal.com

 

 昨年のCLの1回戦でバイエルン・ミュンヘンとぶつかったアーセナル。1st legホームで迎え撃ったが3−1で落としてしまう。しかし、2nd legは2−0で勝利を得た。トータルスコアは3−3と並んだが、アウェイゴール数の関係性で敗退してしまった。

 

 ここで注目するべきは、ヴェンゲルがアウェイゴールのルールを撤廃を主張する理由である。簡単に要約すると以下のようになる。

 

《ヴェンゲルの指摘》

・「本拠地で1-3と敗れ、敵地で2-0の勝利を挙げた。アウェーゴールの負担は重すぎて、大きすぎる。 」

・「なぜ彼ら(UEFA)がアウェーゴールを 取り入れたか?それはテレビ放送がな かったからだ」

・「時に、逆効果でホームチームが点を奪 われないプレーをすることがあると思 う。今ではホームチームの監督が真っ先 に言うのは『失点しないようにしよう』 ということだ」

 

3つに絞って考えてみると非常に正当な主張であろう。それはアウェイゴールが導入された背景から見ていこうと思う。

ヴェンゲルの指摘の1点目、敵地でのゴールの重みという事項になります。アウェイゴールが導入された今から約50年前は国外や国内での移動でも100キロ以上の移動になると時間も選手のコンディション面の差が明らかにホームチームより明確に出てしまうという現状があった。しかし、近現代の移動速度やコンディションケアーなどのトレーニング技術が格段に進歩しホームチームとそれほど変わらないコンディションをアウェイチームも作れるように変化してきた。そのことを考慮した上で、アウェイゴールを同点だった場合に2倍で計算する必要性はないのではないかということヴェンゲルは指摘している。

 

次に2点目の主張である、テレビ放送がこの問題と関係あるのか?という微妙な関係性を指摘しているように見えるが無関係な話でもない。

 この制度が導入した当初はレフリーの裁く基準がホームアドバンテージによって、ホームチームに有利な笛が吹かれることが多々合った。しかし、現代になり情報技術が発展しネット環境はあればフルマッチの動画やハイライトなどが見られるようになり圧倒的ホームチームに都合の良いレフリングが減りつつ有る。そのような現状ではアウェイゴールの持つ意味もそれほど多くないのではないかという結論が出つつ有るのである。

 

 最後に3点目の検証である。アウェイゴールのルールによって、ホームチームは最小限の失点に抑えようという考えが主流になりつつある。この考えによって、アウェイチームはゴールを奪うことが難しくなっているのである。CLは180分間のゲームと言われるが、CLのような規模の大きい大会で守備的に振る舞うことは本当にプロスポーツの醍醐味を引き出しているかという疑念である。スポーツという競技の側面上、勝利至上主義的に振る舞い、強豪チームが自陣のゴール前にバスを並べるというような揶揄が起きてしまうのもこのような制度の上の産物でしかないのである。

 

 

【理想のプロスポーツとは】

 ヴェンゲルの主張を一方的に支持してしまったが、理想的なプロスポーツとは何なのかということにスポットライトを当てて考えてみたいと思う。

 

 アウェイゴールの有無に関わらずに、チームとして明確なコンセプトを持ち本拠地・敵地で変わらない振る舞いを行なうのがベストチームであろう。そのような姿で臨み、結果的に敗退してしまってもそこにあるのは潔い敗者、つまり“美しき敗者”なのではないだろうかと思う。

 

 マッチレビューという訳ではないが、取り上げたいのは昨年のCLのレアルマドリー×バイエルンミュンヘンの2試合である。マドリーは洗練されたカウンタースキルと各人の長所を出せるシステムをアンチェロッティとボールを保持するという明確なコンセプトを持ち試合をコントロールしポゼッションしながら敵ゴールに迫るというグアルディオラの両者の試合である。

 

 試合は2戦とも同じような流れであった、カウンターに備えるマドリーとジリジリと迫るバイエルン。だが、いつもとは異なる様相を魅せたのはデシマを達成したマドリーであった。サイドチェンジを許さずに攻撃サイドを偏らせることで、対抗した。これはマドリーがアトレティコに苦しめられた戦術であり、それを体現することに成功した。またシュバインシュタイガーとクロースの後方を封じることによって、DFラインを経由して作り直しをさせないという攻撃的守備も効いていた。

 

 決して守備的ではない、いつ懐にあるナイフを使うか。その切れ味を来たる時の為に磨いておくこそがCLという最高舞台で王者になる為の下準備である。

 

 今日は長くなってしまったので、この辺で。さようなら。